打ち合わせから何日かして、分厚い紙の束が届きます。平面図、色のついた完成予想の絵、商品の名前と品番がずらりと並んだ一覧。どこから見ればいいのか分からないまま、ページをめくるだけで終わってしまった。そんな経験はありませんでしょうか。
先にお伝えします。提案書は、絵のきれいさで見るものではありません。確かめるのはただ一つ。打ち合わせで話したお困りごとが、この束の中で解決されているかどうかです。図面の読み方を知らなくても、そこは見られます。
この記事では、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から、提案書のどこを見ればよいのかをお伝えします。じつは私自身、毎日こうした提案書に目を通している人間です。
直美さん 図面も専門用語も分からないのに、提案書を見て判断なんてできるんでしょうか。
ナビ 図面は読めなくて構いません。ご自分が話したお困りごとが返ってきているか、そこだけ見てください。
- 提案書のどこを見ればよいか分からない
- 図面や専門用語が読めない
- パースをそのまま信じてよいか不安
- 希望が伝わっているか確かめたい
- 完成してから後悔したくない
提案書で先に見る三つ

提案書が届くと、つい絵のきれいさに目が行きます。色がついていて、家具まで描き込まれていて、眺めているだけで楽しいものです。けれど、きれいな提案書と良い提案書は、同じものではありません。
私が提案書に目を通すとき、最初に確かめているのは三つです。お困りごとが解決されているか。完成のイメージが湧くか。お願いした仕様になっているか。この三つなら、図面が読めなくても見られます。
困りごとが解決されているか
いちばん大事なのはここです。その提案が、お客様のお困りごとを解決するものになっているか。私が提案書を受け取ったとき、何より先に確かめるのもこの一点になります。
打ち合わせで話したことを思い出してみてください。収納が足りない、朝の支度で家族がぶつかる、掃除がつらい。その一つ一つに、提案書のどこかで答えが返ってきているでしょうか。提案書が出てくるのは2回目の打ち合わせで、全体の回数は「リフォームの打ち合わせは何回?」をご覧ください。
返ってきていないなら、それは良い提案書とは言えません。見栄えより、自分の困りごとが消えているかどうかで読んでください。何をどう伝えるかはリフォーム要望の伝え方にまとめています。
完成のイメージが湧く提案
二つ目は、完成した姿が頭に浮かぶかどうかです。読み終えたときに、新しくなった部屋で過ごしている自分が想像できたなら、その提案書は役目を果たしています。
浮かばないのであれば、まだ決める段階ではないということです。イメージが湧かないまま進めると、出来上がってから違ったと感じることになります。
そして浮かばない理由は、たいてい提案書の側にあります。ご自分の想像力が足りないのだと思い込まないでください。伝わるように作るのは、提案する側の仕事です。
言葉だけの提案は伝わらない
三つ目は、写真や絵がきちんと載っているかどうかです。言葉だけでは、お客様に伝わりません。これは私が提案書を作る側として、いつも気をつけているところでもあります。
商品の名前と品番だけが並んだ紙を渡されても、どんな姿のものか分からないはずです。写真が載っているか、その写真が本当にその商品のものか。ここは意外と抜け落ちます。
文字だけのページが続いていたら、写真を見せてほしいとお願いしてみてください。わがままな要求ではありません。分かるように見せる責任は、こちら側にあります。
誰が作った紙かで変わる見方

ここで、あまり知られていないことをお伝えします。お手元に届く提案書は、一人が作った紙ではありません。何人かの手を通ってできあがった束なのです。
水回りや建材の仕様は、私のようなメーカーの者が作ります。そこへリフォーム会社やハウスメーカーが平面図、仕様書、パース、建築図面の一式を足して、一つの束にしてお届けしています。紙ごとに作った人が違うので、見るところも変わります。
建築の図面は会社の手で
平面図やパースは、工事を請け負うリフォーム会社やハウスメーカーが作ります。間取り、寸法、部屋のつながり。家そのものに関わる部分を受け持っている紙です。
この平面図で、読者の方がご自分でも確かめられるものがあります。家具の配置と、残っているスペースです。いま使っているテーブルやソファが置けるか。人が通れる幅があるか。
寸法の数字が読めなくても、家具を思い浮かべれば見当がつきます。置き場所に困るものがないかを、一つずつ当ててみてください。間取りを変える工事なら壁付けキッチンを対面にできる?も参考になります。
水回りの仕様はメーカーの手で
いっぽう、お風呂やキッチン、洗面といった水回りの仕様はメーカーが作ります。どの商品の、どの品番で、どんな性能のものを入れるのか。私がふだん手がけているのは、この部分になります。
ここで見ていただきたいのは、お願いした仕様になっているか、希望どおりの内容になっているかです。打ち合わせで頼んだはずのものが、別のものに置き換わっていないでしょうか。
私もこの一覧は、必ず一行ずつ目で当てていきます。話したことと紙に書かれたことが合っているかは、そうやって確かめるしかありません。商品の選び方はお風呂リフォームの選び方とキッチンリフォームの選び方にまとめました。
パースで分かるのは空間
パースというのは、完成した部屋を絵にしたものです。最近のパースはシステムの精度がとても上がっていて、正しい絵になっていることが多いです。あまり疑わずに見ていただいて構いません。
パースで分かるのは、その空間ぜんたいのイメージです。リビングがどんな雰囲気になるのか。明るさや広がりがどう変わるのか。そういうものが伝わってきます。
逆に、商品ひとつの細かいところまでは読み取れません。パースは部屋を見る紙だと思っていただくと、ちょうどよい距離感で付き合えます。

受け取ったあとにやること

三つを確かめたら、次は紙から離れます。提案書は、机の上だけで判断しきれるものではありません。文字と絵だけでは、どうしても届かないところが出てきます。
そこでいちばんおすすめしたいのが、提案書を持ってショールームへ行くことです。これをしておくと、こんなはずじゃなかったという後悔がぐっと減ります。
提案書を持ってショールームへ
もしショールームへ行けるのであれば、提案書を持って、実物を確かめておいてください。手ぶらで行くのと提案書を持って行くのとでは、見てくるものがまるで違ってきます。担当者と一緒に行くかどうかで迷われたら、ショールームはリフォーム会社と一緒に行く?もご覧ください。
提案書があれば、ご自宅に入る商品がどれなのかもう決まっています。その現物の前に立って、紙と見比べられるわけです。紙の上の品番が、目の前の形になります。
なおショールームは、契約をする場所ではありません。営業されるのではと心配な方はリフォームのショールームは営業される?を先に読んでみてください。
仕様と色柄は実物で確かめる
ショールームで見ていただきたいのは、設備機器の仕様や色柄といった、もっと細かいところです。パースでは空間を見て、ショールームでは商品を見る。役割がきれいに分かれています。
色や柄は、紙の上と実物で感じ方が変わるものです。手で触ったときの質感、照明の下での見え方。こういうものは現物の前に立たないと分かりません。大きめのサンプルの見方はリフォームの色決めはいつ?にまとめました。
体を動かして試すことも忘れないでください。お風呂なら靴を脱いで浴槽に入り、キッチンなら鍋を振る動きまでやってみる。眺めるだけで終わらせないのが大事なところです。
機器の性能を改めて確認
もう一つ、機器の性能も改めて確かめておいてください。打ち合わせで一度は聞いているはずですが、たくさんの話をした中の一つなので、記憶があいまいになりやすいところです。
掃除がどこまで楽になるのか。お湯がどのくらい冷めずに保てるのか。自分のお困りごとを解決してくれる性能なのかを、もう一度あてはめてみてください。
気になるところが出てきたら、早めに伝えるのがいちばんです。発注してからの変更は、費用も納期も延びます。このあたりはリフォームの追加費用にくわしく書きました。

提案書によくある質問

ここまででお伝えしきれなかった点を、ご相談の多い順に並べました。気になるところだけ拾い読みしていただいて構いません。
図面や専門用語が読めないとき
読めなくて構いません。お客様に分かる提案書を作るのが、私たちの仕事です。分からない言葉が出てきたら、その場で聞いてください。聞かれて困る担当者はいません。どこが伝わっていないかが分かるので、むしろ助かります。それでも文字だけのページが続くようなら、写真を見せてほしいとお願いしてみてください。伝わらない提案書は、良い提案書ではありません。
パースのとおりに仕上がるか
空間のイメージという点では、かなり近い姿になります。最近のパースは精度が上がっているので、形や配置は信じていただいて大丈夫です。ただし商品の色柄や質感の細かいところまで、紙や画面で再現しきれるわけではありません。そこはショールームで実物を見るほうが確実です。パースは部屋を見るもの、ショールームは商品を見るもの。二つは別の役割だとお考えください。
希望と違うところがあったとき
遠慮なく伝えてください。提案書は一度で決まりきるものではありません。違うところを直して、もう一度出してもらうのがふつうの進み方です。そのために確かめる段階があります。言いにくいと感じる方もいらっしゃいますが、黙って進めても困るのはお互いです。ただし発注したあとの変更は、費用も納期も延びます。その区切りについてはリフォームは契約後に変更できる?にまとめました。直すなら、押印する前のいまがいちばん軽くて済みます。
提案書は何社からもらえるか
何社からもらっても構いません。いくつかの提案を並べてみると、ご自分のお困りごとにどこまで向き合ってくれたのかが見えてきます。同じ要望を伝えたのに、返ってくる提案はきれいに分かれるものです。その分かれ方こそが、その会社の考え方だとお考えください。ただし頼む会社を増やしすぎると比べきれません。進め方はリフォーム相見積もりの取り方にまとめています。
提案書と見積書は別のものか
別の紙です。提案書はどんな部屋になるかとどの商品を使うかを示すもの、見積書はその工事にいくらかかるかを示すものになります。二つは必ずセットで見てください。提案書だけ眺めていると、何にどれだけかかっているのかが分かりません。逆に見積書だけ見ていても、出来上がりの姿が見えてきません。読み方はリフォーム見積書の見方にまとめました。
まとめ

提案書は、絵のきれいさを競うものではありません。打ち合わせで話したお困りごとが、この束の中で解決されているか。見るところは、そこだけです。図面が読めなくても、ちゃんと確かめられます。
- 絵のきれいさでは判断しない
- 困りごとが解決されているか
- 完成のイメージが湧くか
- 言葉だけの提案は伝わらない
- 写真が正しく載っているか
- 提案書は何人かの手でできた束
- 平面図とパースは会社が作る
- 水回りの仕様はメーカーが作る
- 平面図は家具とスペースを見る
- パースで分かるのは空間ぜんたい
- 仕様はお願いどおりか一行ずつ
- 提案書を持ってショールームへ
- 色柄と質感は実物で確かめる
提案書が出てくるのは、頼む会社を決めたあとです。まずは、話を聞いてみたい会社を何社か見つけるところから始めてみてください。そろそろ具体的に、と思い始めた方なら、ちょうどよい時期だと思います。
要望の伝え方はリフォーム要望の伝え方、会社の選び方はリフォーム会社の選び方にまとめました。頼み先で何が変わるのかはリフォームはどこに頼む?もどうぞ。


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