壁付けのキッチンを、対面に変えたい。そう思っていても、自分の家でできるのかどうかが分からない。そんなお悩みをよく耳にします。間取りそのものを変える工事になりますので、同じ場所で入れ替えるリフォームとは、話がまるで違ってくるのです。
先に結論をお伝えします。対面にできるかどうかは、二つのことで決まります。もとの壁を壊せるかどうかと、対面にしたあとのLDKにスペースが足りるかどうかです。この二つが通れば、たいていのお宅で実現できます。
この記事では、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から、対面にできる家の条件と、変えたあとに出てくる声をお伝えします。日数や範囲はあくまで目安で、現場の状況によって前後します。
直美さん 壁付けのキッチンを対面にしたいのですが、うちでもできるのでしょうか。壁を壊すと聞いて、少し怖くなってきました。
ナビ その壁を壊せるかどうかが、まさに最初の分かれ道です。それと、全部を開け放たない形もありますよ。
- 壁付けから対面に変えたい
- うちでできるのか分からない
- 壁を壊せるのか心配
- 工期がどれだけ延びるか不安
- 対面にして後悔したくない
対面にできるかどうかの分かれ目

結論から申し上げます。壁付けから対面へ変えられるかどうかを決めるのは、配管でも電気でもありません。もとの壁を壊せるかどうかと、スペースが足りるかどうか。この二つが、いちばん大きな判断の軸になります。
配管や電気は、あとからいくらでも考えようがあります。ところが壁とスペースだけは、あとから増やすことができません。ですからリフォーム会社に相談する前に、ご自宅を見ながら当たりをつけておくと、そのあとの話がぐっと早く進みます。
もとの壁を壊せるかどうか
対面にするということは、いまキッチンが向いている壁をなくすということです。ですからその壁を壊してよいのかどうかが、最初の関門になります。ここが通らなければ、次の話へは進めません。
戸建てであれば、家を支えている柱や筋かいの入った壁は、そのまま残す必要があります。マンションであれば、コンクリートの壁は動かせません。どちらも図面と現地の両方を見れば、判断のつくことです。
ご自宅で当たりをつけるなら、壁を軽く叩いてみてください。詰まったような音がすれば、中に何かが入っています。ただし素人判断は禁物ですので、最終的な可否は必ずリフォーム会社に見てもらってください。
LDKのスペースが足りるか
壁を壊せたとしても、次に出てくるのがスペースの問題です。対面にすると、キッチンは部屋の内側へ出てきます。その分だけ、ダイニングやリビングに使える面積は減ることになります。まわりの壁がなくなるので電源の取り方も変わります。くわしくはキッチンのコンセントは増やせる?にまとめました。
壁付けのキッチンは壁にぴったり付いているので、場所をほとんど取りません。対面にすると、カウンターの奥行きと、そのうしろを人が通る幅が新たに要ります。合わせて1メートル以上の余裕が必要になる、と考えてみてください。壁付けのまま入れ替える場合も手前に5センチ出てきますので、奥行き65センチは使いにくいかもあわせてご覧ください。
ここで大切なのは、キッチンだけを見て決めないことです。ダイニングテーブルは置けるのか。うしろを人が通れるのか。LDK全体のレイアウトごと考え直す工事だと思っていただくのが、いちばん近いと思います。
対面にもいろいろな形がある
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。対面という言葉を聞くと、すべてが見渡せる形を思い浮かべる方が多いのですが、対面にも形はいくつもあります。
たとえば、レンジフードの前の壁を残す形です。手元とコンロまわりは隠れたまま、シンク側からはダイニングが見える。油はねやにおいも抑えられますので、全部を開け放つのが不安な方には、こちらのほうが向いています。
どこまで開けて、どこを残すのか。ここは好みの話ですので、正解というものがありません。どんなキッチンとダイニングの空間にしたいのかを、リフォーム会社と一緒に相談しながら決めていくとよいでしょう。

レイアウト変更で動くもの

対面にできそうだと分かったら、次は工事の中身です。ここは入れ替えだけのリフォームと大きく違うところですので、先に知っておいていただきたいと思います。
ひとことで言えば、動くのは一部ではなく、設備のすべてです。どれが大変でどれが簡単という順番も、実はありません。まとめて位置が変わる工事だと考えてください。
設備はまとめて位置が変わる
キッチンの場所が変われば、給排水も、ガスも、レンジフードの排気も、電気の配線も、基本的にすべての設備位置が変更になります。どれかひとつだけ残すということが、できないのです。
配管を延ばすだけではないのか、とよく聞かれます。ところが実際には、水を流すための傾きを取りながら新しい位置まで引き直しますし、排気は外へ抜ける経路をもう一度つくることになります。電気もまったく同じです。
ですから見積書を見るときは、キッチン本体の金額だけを見ないでください。設備を動かす工事の行が、きちんと分かれて書いてあるか。ここに会社ごとの差が出ます。
マンションは床の上を配管が通る
戸建てとマンションでは、考え方がはっきり分かれます。マンションは、床の上を配管が通っていることがほとんどだからです。転ばし配管と呼ばれる納め方です。
床の下がコンクリートですので、配管を床下へ落とすことができません。そのため、いまある配管の通り道を見ながら、置けるキッチンの位置や形を考えていくことになります。ここは商品の提案そのものが変わってきます。
戸建てであれば、床下の空間を使って配管を回せることが多くなります。とはいえ、大引きなどの下地を避けて通しますので、まったく自由というわけでもありません。いずれにしても、現地を見ないと決められない部分です。
工期は1週間から2週間
気になる工期です。同じ場所で入れ替えるだけなら5日から7日ほどですが、レイアウトを変えると1週間から2週間ほどになることもあります。範囲によっては倍近くになると思っておいてください。
延びるのは、床と壁と天井の工事が加わるからです。もとのキッチンがあった場所には跡が残ることがありますし、新しい位置には下地をつくることになります。工事の種類が増えれば、そのぶん日数も増えていきます。
なお、同じサイズのキッチンに入れ替えるだけであれば、床と天井はそのままにすることが多くなります。壁はタイルからキッチンボードに替える場合が多いです。どこまで直すかで、日数は大きく変わります。

対面キッチンにした方の声

最後に、実際に対面へ変えたお客様から届く感想をお伝えします。不安にさせたいわけではありません。先に知っていれば、形の選び方で防げるものばかりだからです。
どれも、すべてをオープンにした対面のプランで出やすい話です。さきほどお伝えした、フード前の壁を残すかどうかという判断にも、そのままつながってきます。
においがリビングに広がる
いちばん多くうかがうのがこれです。キッチンのにおいが、リビングやダイニングに広がりやすくなります。あいだを仕切るものがなくなるのですから、当然といえば当然です。
焼き魚やお鍋の日に、カーテンやソファへにおいが移るのが気になる、という声をよく聞きます。レンジフードの性能だけでは、どうしても抑えきれない部分があります。
気になりそうであれば、フード前の壁を残す形を検討してみてください。完全に防げるわけではありませんが、広がり方はずいぶん変わります。そしてこの判断は、契約してからでは戻せません。
手元がいつも見えている
これも、よくうかがう声です。オープンな対面は、キッチンの上が常に見えています。散らかっていると、その状態がリビングから丸見えになるのです。
毎日のことですので、片づけなければという気持ちがずっと続きます。特にお客様がいらっしゃるときは、慌てて隠す場所を探すことになった、というお話もよく聞きます。
手を打つ方法はいくつかあります。手元を隠す高さの立ち上がりを付ける、背面に扉付きの収納を増やす、フード前の壁を残す。片づけの習慣を変えるより、隠せる形を選ぶほうが確実だと思います。
食洗機の音が気になる
意外に見落とされるのが音です。食洗機やレンジフードの音が、リビングまで届くようになります。壁で仕切られていたときには、気にならなかった音です。
テレビの音が聞き取りにくい、くつろいでいるときに気になる、といったお話をうかがいます。静かな機種を選ぶ、動かす時間帯をずらすといった工夫で、ずいぶん違ってきます。
ショールームでは、ぜひ食洗機を実際に動かしてもらってください。カタログの数字を見比べるより、音を耳で聞いたほうが早いです。ここは見て選ぶより、聞いて選ぶところだと思います。
よくある質問

ここまでにお伝えしきれなかった点を、ご相談の多い順に並べました。気になるところだけ拾い読みしていただいて構いません。
壁を残す対面もできるか
できます。レンジフードの前だけ壁を残す形や、手元を隠す高さの立ち上がりを付ける形があります。全部を開け放つのが不安であれば、こちらから検討してみてください。どんな空間にしたいかを伝えれば、形はいくつも提案してもらえます。
マンションでもできるか
できる場合が多いのですが、条件が付きます。コンクリートの壁は壊せませんし、床の上を配管が通っていますので、その経路を見ながら位置を決めることになります。管理規約の確認も、あわせて先に済ませておきましょう。
工事中は住めるのか
住みながら進められることがほとんどです。ただし台所が1週間から2週間ほど使えなくなりますので、そのあいだの食事をどうするかは先に決めておいてください。工事中の暮らしについては、別の記事にまとめてあります。
対面にすると寒くならないか
壁がなくなる分、冷たい空気は動きやすくなります。とはいえ、いまの住まいは断熱の性能そのものが上がっていますので、壁の有無だけで決まる話ではありません。気になるなら、窓や床の断熱もあわせて相談してみるとよいでしょう。
対面にして後悔しないか
後悔の中身は、たいてい先ほどの三つに集まります。におい、見た目、音です。この三つを知ったうえで形を選べば、大きく外すことはありません。迷ったら、壁を残す形も一度見せてもらってください。
まとめ

壁付けから対面へ変えられるかどうかは、壁を壊せるかどうかと、スペースが足りるかどうかで決まります。この二つが通れば、設備はまとめて動かせます。工期は1週間から2週間ほどが目安です。
- 判断の軸は壁とスペースの二つ
- 家を支えている壁は壊せない
- 対面はLDK全体を変える工事
- フード前の壁を残す形もある
- 設備の位置はすべてまとめて変わる
- マンションは床の上を配管が通る
- 工期は1週間から2週間
- 同じサイズなら床と天井はそのまま
- 後悔の中身はにおいと見た目と音
- 形の選び方で先に防げる
そして対面にも形はいくつもあります。全部を開け放つ形だけが対面ではありません。においも、見た目も、音も、形の選び方で先に防げます。どんなキッチンにしたいのかを、まず言葉にしてみてください。
キッチンそのものの選び方はキッチンリフォームの選び方に、工事中の暮らしはリフォームは住みながらできるかにまとめました。費用が増える場面はリフォームの追加費用、見積書の読み方はリフォーム見積書の見方をご覧ください。頼む会社の見分け方はリフォーム会社の選び方、替え時は築20年の水回りリフォーム時期もどうぞ。


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