キッチンの入れ替えを考えはじめて、いまは奥行き65センチが標準だと知る。ところが図面を見ると、うちのキッチンは60センチと書かれている。手前に5センチ出てきますと言われても、それがどれくらいのことなのか見当がつきません。作業台が広くなるのはうれしいけれど、後ろを通れなくなったら困ります。
先に結論をお伝えします。奥行きが65センチになって、使いにくくなることはほとんどありません。引き出しもシンクも大きくなり、しまえる量は増えています。
この記事は、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から書いています。奥行きの違いで現場に何が起きるかは、ご提案を組むたびに確かめているところです。
直美さん うちは60センチなんです。65センチにすると、後ろが通れなくなりませんか。
ナビ 見るのは背面収納までの距離だけですよ。測るのは2か所で足ります。
- いまの奥行きは60センチ
- 手前に5センチ出ると言われた
- 背面との通路が狭くなる心配
- 奥のものに手が届くか不安
- 60センチの商品があるか知りたい
使いにくくなるのは奥ではない

まず、いちばん気になるところからお答えします。5センチ深くなっても、使い勝手が悪くなることはありません。できるようになることのほうが、ずっと多いと感じています。
深くなったぶんは、すべて手前に出てきます。壁の側は動かせませんから、天板の手前の端が部屋の内側へ寄る形です。奥が遠くなるのではなく、手前が近くなると言い換えてもよいでしょう。
ですから、変わるのは背中側の通り道だけです。立ったときの感じ方や、ものの出し入れは、むしろよくなっています。深くなったことの中身を順に見ていきましょう。思っていたより良い話が多いと感じていただけるはずです。
深くなったのは手前の5センチ
昔のキッチンは奥行き60センチが標準でした。いまは各社とも65センチが標準です。同じ場所に入れ替えるだけで、手前に5センチ出てきます。
この5センチは、天板の上では作業するスペースとして効いてきます。まな板を置いたまま鍋を寄せておける。切った野菜を端に避けておける。奥に調味料を並べても、まだ手前に余裕が残ります。ふだんの手数が少しずつ減っていく寸法です。
選び方の全体の流れはキッチンリフォームの選び方に、替え時の目安は築20年の水回りリフォーム時期にまとめました。
引き出しとシンクが大きくなった
奥行きが深くなって、いちばん変わったのは収納です。引き出しの奥行きが深くなり、しまえる量がかなり増えました。同じ幅のキッチンでも、入る量が違ってきます。
シンクも大きくなっています。斜めにしないと入らなかった大きなフライパンが、そのまま寝かせて洗えるようになりました。洗いものの途中で置き場所に困ることが減ります。
つまり、天板の上だけでなく、下も手前もよくなっているということです。5センチというのは、それだけの差が出る寸法なのだとお考えください。同じ幅のまま入れ替えただけで、台所の使い勝手がひとまわり変わります。
奥のものは取り出しにくくない
深い引き出しだと、奥のものが行方不明になるのではないか。よくいただくご心配です。いまの引き出しは最後まで引き出せるので、奥のものも取り出しやすくなっています。
立ったまま見下ろして、奥の列まで見渡せます。手前のものを出してから奥を探す、という動きがいりません。奥行きが深いことが、そのまま不便にはつながらない作りになっています。
吊戸棚にも触れておきます。もともと高い位置にあるので、ふだん使えるのは下の段までです。上の段は季節の食器など、たまに使うものの置き場所にされる方が多いですね。手の届く高さが変わるわけではないので、奥行きの話とは切り離して考えて差し支えありません。同じ考え方は洗面所の吊戸棚にもあてはまります(洗面台の高さは身長で決まる?80センチの選び方)。

気をつけるのは背面との通路

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。手前に5センチ出るぶん、背面収納との通路はそのまま5センチ狭くなります。見ておくのはここだけです。
通路の幅は、立つ人の数で感じ方が変わります。一人で使うぶんには気にならない幅でも、二人で並ぶと途端に窮屈になるものです。
しかも、ふだんのキッチンでは引き出しを開けた状態で動いています。そこまで考えておけば、入れ替えたあとに驚くことがなくなります。
測るのは本体と背面の2か所
お住まいで測っていただきたいのは2か所です。いまのキッチンの奥行きと、背面収納までの通路の幅。メジャーがあれば数分で足ります。
奥行きは、天板の手前の端から壁までを測ります。通路は、天板の手前の端から背面収納の扉の面までです。どちらも立って使う高さのところで測ると確かです。床の上は巾木があって数字がずれることがあるので、腰の高さで当ててみてください。
この2つの数字を渡すだけで、話が一気に具体的になります。リフォーム要望の伝え方にも書きましたが、先に数字があるほど提案の精度は上がるものです。
通路の目安は90センチと120センチ
目安をお伝えします。一人で使うなら90センチ前後、二人で並ぶなら120センチ前後。これより狭くなると、動きに余裕がなくなってきます。
いまの通路が95センチなら、65センチのキッチンに替えて90センチになります。一人で使うぶんには収まる形です。ご家族と並んで立つことが多いなら、ここで考える余地が出てきます。お子さんが手伝いに入る、二人で同時に支度をする。そういう日が多いかどうかで決めてください。
どちらにしても、数字で先に分かることです。解体してから出てくる種類の話ではありません。壊してみて分かることについてはリフォームの追加費用に書きました。
引き出しを開けた状態で考える
もう一つ加えておきたいのが、引き出しを開けた状態です。開けている引き出しは、そのぶん通路へ出てきます。閉じた寸法だけで考えると、ここが抜けます。
ショールームでは、引き出しを開けたまま後ろを通ってみてください。背面収納の扉も開けてみる。両方が開いた状態で立てるかどうかが、ご自宅での毎日に近い確かめ方になります。
体の動かし方まで試す見方はリフォームのショールームは営業される?にまとめています。展示を眺めるだけで帰らないのが、もったいなくない使い方ですね。

60センチのキッチンもある

通路がどうしても取れないお住まいもあります。その場合でも、あきらめなくて大丈夫です。奥行き60センチのキッチンは、いまも選べます。
ただし、65センチと同じようには選べません。用意されている商品の数がかぎられ、選べる仕様にも違いが出てきます。知らずに期待すると、提案を見たときにがっかりしてしまいます。
どういうときに60センチを選ぶのか、そして何がかぎられるのかを見ていきましょう。
60センチでないと入らない場合
60センチの商品は、昔の60センチのキッチンしか入れ替えられない条件のために用意されています。選べる幅を広げるためではなく、納めるための選択肢だということです。
たとえば、手前に5センチ出ることで窓や勝手口のサッシに当たってしまう。腰壁の寸法が足りなくなる。こうしたことが起きる間取りがあります。いずれも、通路が狭くなるかどうかとは別の話です。奥行きそのものが納まらないので、65センチを選びようがないという形になります。
どちらも図面と現場を見れば、工事の前に分かることです。下見のときに、窓と勝手口の位置まで見てもらってください。
選べる商品と引き出しの違い
次に、60センチにしたときに変わることです。選べる商品の数は、65センチよりずいぶん少なくなります。扉の色柄や仕様の組み合わせも、その中から選ぶ形です。
引き出しの奥行きも浅くなります。深いぶんだけ入るという話の逆で、しまえる量は65センチより少なくなります。背面収納で補うなど、全体で考えておくとよいでしょう。
提案を受け取ったら、希望した仕様がそのまま入っているかを確かめてください。見るところはリフォームの提案書はどこを見る?にまとめています。
食洗機は選べる機種が少ない
もう一つ、見落としやすいところがあります。60センチのキッチンでは、入れられる食洗機の機種がかぎられます。選べる商品の数そのものが少ないので、組み合わせられる機器も狭くなるのです。
食洗機を入れるつもりなら、奥行きを決める前にそう伝えておきましょう。あとから足そうとすると、選べるものがなくて困ることがあります。
いまお使いの食洗機だけを替える話は食洗機だけ交換できる?に、頼み先ごとに扱える商品の違いはリフォームはどこに頼む?にあります。
キッチンの奥行きによくある質問

ここからは、奥行きについてよくいただくご質問にお答えします。ショールームで実際に聞かれることを選びました。気になる項目から読んでいただければと思います。
奥行きはどこを測ればよいか
天板の手前の端から、壁までを測ってください。横の幅ではなく前後の長さです。図面が手元にあれば、そこに書かれている数字でも構いません。
カップボードは45センチでよいか
標準として多いのは45センチです。65センチのものもありますが、奥のものが取り出しにくくなります。選ぶなら、奥まで引き出せる引き出しにするかどうかまで一緒に考えてください。
通路が90センチ取れないとき
手は二つあります。キッチンを60センチにするか、背面収納を薄いものにするかです。どちらを削るかは、ふだんどちらをよく使うかで決まります。調理の場所を広く使いたいなら背面を薄く、しまう場所が要るならキッチンを浅く。下見のときに両方の案を出してもらいましょう。
対面にする場合も同じか
考え方は同じですが、要るスペースはもっと大きくなります。手前にカウンターが付くぶん、部屋の側へさらに出てくるためです。くわしくは壁付けキッチンを対面にできる?をご覧ください。
見積書で奥行きは分かるか
品番の一覧に書かれています。仕様の欄まで目を通すと、思っていた商品かどうかが分かります。読み方はリフォーム見積書の見方にまとめました。
まとめ

奥行きが65センチになって使いにくくなることは、ほとんどありませんでした。引き出しもシンクも大きくなり、奥のものも取り出しやすくなっています。見ておくのは、背面との通路の幅だけです。そこが足りないお住まいのために60センチの商品も残されていますが、選べるものはかぎられます。
- 昔は60センチ、いまは65センチが標準
- 深くなった5センチは手前に出る
- 奥が遠くなるわけではない
- 引き出しの奥行きが深くなった
- シンクも大きくフライパンが寝かせられる
- 最後まで引き出せるので奥も取り出せる
- 吊戸棚の上段はたまに使うものの置き場
- 通路はそのまま5センチ狭くなる
- 測るのは奥行きと通路幅の2か所
- 目安は一人90センチ二人120センチ
- 引き出しを開けた状態で考える
- 60センチの商品もいまも選べる
- 選べる商品と引き出しの深さはかぎられる
- 食洗機は選べる機種が少なくなる
測るのは2か所、持っていく数字は2つ。それだけで、提案の中身が自分の暮らしに合っているかどうかが見えてきます。数字を先に渡してから、ショールームで体を動かして確かめる。この順番で進めてみてください。
会社の見分け方はリフォーム会社の選び方、相見積もりの進め方はリフォーム相見積もりの取り方にあります。工事中の暮らしが気になる方はリフォームは住みながらできる?、契約したあとの変更はリフォームは契約後に変更できる?もあわせてどうぞ。


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