お風呂をまたぐとき、ちょっと心もとない。トイレから立ち上がるとき、つかまるところがほしい。ご自分のことでも、ご実家の親御さんのことでも、そう思う場面はあるものです。けれども壁に穴を開けるとなると、そもそも付くのだろうかと心配になります。いまの浴室を壊すことになるのでは、と思われるかもしれません。
先にお伝えします。あとからでも手すりは付けられます。壁の中に下地がなくても大丈夫です。そのための商品が各メーカーに用意されています。ただし、ひとつだけ気をつけたいことがあります。取り付けたあとで、位置や高さを変えることはできません。
この記事は、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から書いています。なぜ下地が要るのか、後付けだと何が変わるのか、そして位置の決め方までお伝えします。
直美さん いまの浴室に、あとから手すりを付けられますか。
ナビ 付けられますよ。大事なのは、どこに付けるかのほうです。
- あとから付くのか分からない
- 壁を壊すことにならないか不安
- どこに付ければよいか迷う
- 見た目が変わりそうで心配
- 工事が大ごとになりそう
下地がなくても付けられる

まず、いちばん心配されるところからお答えします。手すりは壁にねじで留めるものですから、壁の中の下地が要ります。けれども下地がないお宅でも、付けられないわけではありません。そのための商品がきちんと用意されています。ここではなぜ下地が要るのか、ないときはどうなるのかを順にお伝えします。
手すりには下地が要る
手すりはタオル掛けとは役目が違います。体の力を乗せるところですから、しっかりした下地が必要です。下地のない壁にそのまま留めても、支えきれません。つかまった瞬間に体重がかかるものですから、ここは譲れないところなのです。
ユニットバスの壁も同じで、もともと下地が入っている場所であれば、そこへ取り付けできます。ただしどこにでも入っているわけではありません。だから、まずは下地のある場所を探すところから始まります。壁を見ただけではどこに入っているか分かりませんので、ここは工事の方に確かめてもらうところになります。ご自分で叩いて探す必要はありません。
下地がなくても付く商品がある
では下地のない場所に付けたいときはどうするのか。ここが知っておいていただきたいところです。下地のない浴室にも取り付けできる、補強の付いた後付け用の手すりが各メーカーにあります。
リフォーム用として作られている商品で、壁を壊したり作り直したりする必要はありません。いまのユニットバスのまま取り付けられます。ご自宅の壁に下地がないと分かっても、そこであきらめなくて大丈夫だということです。手すりを付けたいからといって、お風呂ごと入れ替えることになるわけではないのです。ここを知らないまま、大ごとだと思って見送ってしまう方がいらっしゃいます。
トイレも洗面も同じ
浴室だけの話ではありません。トイレも洗面所も、体重を支えられるように基本は下地が要ります。考え方はまったく同じです。立ち上がるときに体をあずける場所ですから、しっかり留まっていなければ意味がありません。
そしてこちらにも、同じように後付け用の商品が用意されています。浴室は付くけれどトイレは無理、ということにはなりません。ご自宅のどの場所でも、まずは相談してみてよいとお考えください。浴室とトイレの両方が気になっているなら、まとめてお願いするほうが話も早く進みます。別々に頼み直す必要はありません。
後付けと入れ替えのときの違い

付けられると分かったところで、次に気になるのは見た目です。じつは、あとから付けた手すりと、お風呂を入れ替えるときに付けた手すりでは、形が少し違います。ここは隠さずにお伝えします。そのうえで、それでも付ける値打ちがあることもお話しさせてください。
台座に補強が入る
違いが出るのは、棒そのものではありません。壁に留まっている台座の部分に補強が入ります。下地のかわりになる役目を、この台座が担っているからです。
お風呂を入れ替えるときに取り付ける手すりは、壁の中にあらかじめ下地を仕込めます。だから台座の丸い部分がなく、すっきりした形で納まります。後付けのほうは、その下地にあたるものを表側で受け持つ、と考えていただくと分かりやすいでしょう。壁の中でやっていたことを、壁の外でやっている。だから台座に厚みが出るわけです。棒の太さや握り心地そのものは変わりません。

見た目は少しゴツくなる
その結果どうなるか。取り付けの部分が、ふつうの手すりより少しゴツく見えます。これは正直なところです。
気になるかどうかは人それぞれです。言われてみれば分かる程度と感じる方もいれば、どうしても目につくという方もいらっしゃいます。ですから商品のカタログで形を見てから決めていただくのがよいと思います。カタログはメーカーのホームページから取り寄せられますので、くわしくはリフォームのカタログだけもらえる?をご覧ください。
それでも付ける値打ちがある
ただ、ここは強くお伝えしておきたいところです。あとから手すりを付けると、浴室の使い勝手は格段によくなります。安心して入浴できるようになる、という変化のほうがずっと大きいのです。
台座が少し大きいという見た目の差と、毎日つかまれる場所がひとつ増えるという差。どちらを重く見るかという話になります。迷われるようでしたら、実際に使う場面を思い浮かべてみてください。浴槽をまたぐ一瞬や、濡れた床で振り返る一瞬に、つかまれるものがあるかどうか。その差は見た目の差よりずっと大きいように思います。
位置と高さは先に決める

ここからがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。手すりは付けること自体より、どこに付けるかのほうがずっと大事になります。なぜなら、取り付けたあとで動かすことができないからです。だからこそ、工事の前の時間を惜しまないでいただきたいのです。
目安はあるが人によって違う
まず知っておいていただきたいことがあります。一般的な位置と高さの目安は、人間工学にもとづいてきちんとあります。何もないところから決めるわけではありません。
ただしそれはあくまで目安です。身長によっても、体の状況によっても、使いやすい高さは変わってきます。だから目安をそのまま当てはめるのではなく、ご要望に合わせて相談しながら決めていくのがおすすめです。この高さで本当によいですか、と一度立ち止まって確かめてもらってください。黙っていると標準の位置で進んでしまいます。
実際につかまって決める
では何を手がかりにすればよいか。答えはひとつです。実際に使う方が、その場でつかまってみてください。カタログの寸法を眺めているより、はるかに確かです。
浴槽をまたぐ動きなら、またぐときにどこへ手が伸びるか。トイレから立ち上がる動きなら、どこを押さえると楽なのか。体を動かしてみると、思っていた場所と違うことがよくあります。頭で考えた位置と、体が自然に求める位置はずれるものです。ご家族で身長が違うなら、毎日いちばん使う方に合わせるのがよいでしょう。全員にちょうどよい一か所を探すより、そのほうが確かです。

あとからは変えられない
そして最後がいちばん大事なところです。取り付けた位置と高さは、あとから変えることができません。ねじで留めてしまうと、そこで決まりになります。
工事そのものは1日で終わる手軽なものです。だからこそ、その前に考える時間をしっかり取ってください。使う方の使いやすい位置を、ご家族で相談しておく。そこさえ押さえておけば、あとは任せて大丈夫です。逆にここを急いでしまうと、使うたびに惜しい思いをすることになります。要望の伝え方はリフォーム要望の伝え方にまとめました。
手すりの後付けのよくある質問

ここからは、手すりの後付けについてよくいただくご質問にお答えします。日数のこと、集合住宅のこと、そして浴室を入れ替えるときとどちらがよいのか。気になりやすい五つを順に取り上げます。
工事は何日かかりますか
浴室に手すりを取り付けるだけなら、1日で終わります。何か所かまとめて付ける場合でも同じです。お風呂が長く使えなくなるような工事ではありませんので、身構えなくて大丈夫です。日をまたぐこともありませんから、ご家族の予定を大きく空ける必要もないでしょう。
マンションでも付けられますか
付けられます。分譲でお住まいなら、ご要望どおりに取り付けできます。賃貸の場合は大家さんや管理組合に申し出て、許可をいただく必要があります。工事の日程だけは先にお伝えしておくと安心でしょう。手すりの取り付けだけなら日数もかかりませんので、そこまで大げさな届け出にはなりません。
浴室を替えるときのほうがよいですか
入れ替えの予定があるなら、そのときに付けるほうが形はすっきり納まります。位置も自由に決められます。お風呂の入れ替えそのものについてはお風呂リフォームの選び方と浴槽のまたぎの高さは選べる?にまとめてあります。
トイレにも付けられますか
もちろん付けられます。後付け用の商品も用意されています。はじめから手すりの付いたトイレを選ぶという考え方もありますので、トイレリフォームの選び方もあわせてご覧ください。
何か所くらい付けるものですか
決まりはありません。困っている動きがいくつあるかで変わってきます。工事の日数は何か所でも同じですので、気になるところをまとめて相談されるのがよいでしょう。一か所ずつ別の日に頼むより、ずっと手間が少なくて済みます。現地を見てもらう流れはリフォームの現地調査は何を見る?に書いています。
つかまる場所がひとつ増える

手すりは、困ってから付けるものだと思われがちです。けれども毎日つかまる場所がひとつあるだけで、入浴の安心感はずいぶん変わります。下地がなくても付けられますし、工事も1日で終わります。思っているより身近なものなのです。
お願いしたいのは、取り付けの前に時間を取ることだけ。実際につかまってみて、使いやすい位置を決めておいてください。ねじを留めたあとでは動かせませんが、その前ならいくらでも考え直せます。急がずに決めた一か所が、このあと何年も効いてきます。
- あとからでも手すりは付けられる
- 手すりには下地が要る
- 下地がなくても付く商品がある
- トイレも洗面も考え方は同じ
- 違いが出るのは台座のところ
- 見た目は少しゴツくなる
- 使い勝手は格段によくなる
- 位置と高さの目安は人によって違う
- 実際につかまって決める
- 取り付けたあとは変えられない
そろそろ具体的に、と思い始めた方は、何社かのお見積もりを並べるところからです。費用がかかるのかどうかはリフォームの見積もりは無料?に書いています。
浴室の工事そのものを考えている方には浴室の床が冷たいのは直せる?と浴室の扉は折れ戸と開き戸どちら?が、洗面所まで手を入れるなら洗面台だけ交換できる?が参考になるでしょう。


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