お風呂が古くなってきたので、そろそろ入れ替えたい。そう思ってカタログを開いてみたものの、どれも同じように見えて決められない。そんな声をよく聞きます。ショールームに行けば分かるだろうと出かけて、かえって迷ってしまった方もいるでしょう。
お風呂選びが難しいのは、カタログに並ぶ言葉のほとんどが「あると嬉しいもの」で、暮らしがどう変わるかが書かれていないからです。浴室テレビやジェットバスは分かりやすい一方、毎日の満足度を決めているのは、実はもっと地味な部分にあります。
この記事では、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案を担当している立場から、お風呂選びで本当に見るべき3つの仕様をお伝えします。特定のメーカーを勧めることはしません。どのメーカーを選んでも使える見方だけをまとめました。
直美さん カタログを3冊もらったのですが、どれも良さそうで違いが分かりません。結局、値段で決めることになりそうです。
ナビ 見る場所を3つに絞ってみてください。断熱と床と換気です。この3つだけ比べれば、カタログの厚みに振り回されずに済みますよ。
- カタログの違いが分からない
- グレードの差が伝わらない
- 冬の浴室が寒くてつらい
- 掃除の手間を減らしたい
- オプションを勧められて迷う
お風呂選びで見るべき3つの仕様

結論からお伝えします。お風呂で比べるべきなのは、断熱と床と換気の3つです。この3つは毎日必ず体感する部分であり、しかも後から足すことがほぼできません。逆にテレビやジェットバスは、なくても暮らしは困らず、使わなくなったという声も多く聞きます。まずは3つの軸で候補を絞ってください。
冬の寒さを左右する断熱
ひとつ目は断熱です。浴室の断熱は、浴槽をくるむ保温材、壁や天井の断熱パネル、そして断熱タイプのふたという3つの組み合わせでできています。これらがそろうと、湯が冷めにくくなり、追い焚きの回数が目に見えて減ります。
もうひとつ大きいのが、浴室そのものの寒さです。冬の脱衣室と浴室の温度差は、体への負担になります。断熱されていない浴室では、扉を開けた瞬間の冷たさがどうしても消えません。壁と天井の断熱が標準かどうかを、必ずカタログで確かめてください。
窓がある浴室なら、内窓を足すという選択肢もあります。浴室の熱は窓から逃げる割合が大きいため、ここに手を打つと体感が変わります。ユニットバス本体のグレードを上げるより効くことも多いので、担当者に相談してみましょう。
掃除の手間が変わる床材
ふたつ目は床です。ここはグレードによる差がとても大きく、しかもカタログでは分かりにくい部分になります。見るべきなのは表面の加工で、水を弾くのではなく水膜を切って乾かすという考え方の床が増えてきました。乾きが早いほど、ぬめりや黒ずみが出にくくなります。
もうひとつ見たいのは、目地と排水口です。床が一枚のパネルでできていれば、汚れがたまる隙間が減ります。排水口も、部品点数が少なく髪の毛が一か所にまとまる形なら、掃除がぐっと楽になるでしょう。
- 濃い色には白っぽい汚れが出る
- 淡い色にはピンクの汚れが出る
- 黒でも汚れが消えるわけではない
- 色より乾きやすさを優先する
最近は黒やダークグレーでまとめた浴室が人気で、床にも濃い色が選べるようになりました。仕上がったばかりの浴室はとても格好よく、写真映えもします。ただ、濃い色なら汚れが目立たないとは限りません。
濃い色の床に残るのは、皮脂や石けんカス、水垢といった白っぽい汚れです。黒い床の上では、これがはっきりと浮き上がって見えます。反対に白い床では、皮脂を養分にして出てくるピンク色の汚れが目につきやすくなるでしょう。どちらも一長一短で、色を変えれば掃除が減るという話ではないのです。
また、素足で踏んだときの冷たさも床で決まります。表面に細かい凹凸があるタイプは、足の裏が触れる面積が減るためひやりとしにくいのです。ここは実際に踏んでみないと分かりませんので、ショールームで必ず確かめてください。
換気と扉で決まる清潔さ
3つ目は換気と扉です。浴室のカビは、湿気が抜けきらないことで生まれます。つまり換気の力そのものより、空気の通り道があるかのほうが効いてきます。
その通り道をつくるのが扉です。扉の下にある通気口は、湿気を通す大事な役割を持っています。一方で、折れ戸のように部品が多い扉は、この通気口まわりに汚れがたまりやすくなります。開き戸や引き戸は構造が単純で、拭き掃除が楽になる傾向があります。
あわせて見ておきたいのが、通気口の位置です。扉の下側に付いているものが一般的ですが、ここは髪の毛やほこりがたまりやすく、掃除が面倒だという声をよく聞きます。最近は通気口を扉の上部に設けた商品も出てきました。派手なオプションではありませんが、日々の手入れの手軽さに直結する部分です。
- 通気口が下側か上側か
- 部品を外して洗えるか
- 溝にごみが入りにくいか

カタログとショールームの見方

見るべき3つが決まったら、次はそれをどこで確かめるかです。カタログとショールームには、それぞれ得意な役割があります。数字で比べるのがカタログ、体で確かめるのがショールームです。順番を間違えると、その場の雰囲気で決めてしまうことになりかねません。
カタログで最初に見る欄
カタログを開いたら、写真のページは飛ばして構いません。まず見ていただきたいのは、後ろのほうにある仕様一覧表です。ここに標準とオプションの区別が記号で示されています。同じ商品名でも、グレードによって断熱が標準だったりオプションだったりするのです。
この表で3つの仕様に印を付けていくと、候補が自然に絞られます。私が提案書をつくるときも、最初に見るのはこの欄です。
サイズの表記も覚えておくと役立ちます。1616や1216といった4桁の数字は、浴室の内側の寸法を表しています。1616なら、内寸がおよそ160センチ角という意味になります。いまのお風呂のサイズが分かれば、比較がぐっと具体的になるでしょう。
ショールームで試す順番
ショールームでは、見るより触ることを優先してください。最初にやっていただきたいのは、浴槽をまたいで中に入ることです。またぎの高さは商品によって違い、10年後の使いやすさに直結します。遠慮せず、靴を脱いで入らせてもらいましょう。
次に、浴槽の中に座ってみます。肩まで浸かれるか、半身浴の段に無理なく腰かけられるか。体格によって合う形は変わるので、ご家族で背の高い方と低い方の両方が試せると理想的です。
最後に、床を素足で踏み、扉を開け閉めしてみてください。カウンターや棚が外せるタイプかどうかも、その場で持ち上げて確かめられます。掃除をする場所を自分の手で触っておくと、カタログの言葉が実感に変わります。
オプションの要る要らない
ショールームでは、目を引く設備がたくさん並んでいます。浴室テレビ、肩に湯が流れる機能、ミストサウナ。どれも体験すると楽しいものばかりでしょう。ただ、毎日使い続けるかどうかは別の話になります。
判断の目安は単純です。後から足せるものは後回しにしてください。逆に、断熱や床のように後から変えられないものを優先します。例外は手すりと浴室暖房乾燥機です。手すりは壁の下地、暖房乾燥機は電気工事が先に要るため、この段階で相談しておきましょう。

工事前に確かめる寸法と日数

商品が決まったら、最後は工事の話です。お風呂のリフォームは、家の中でも特に「入ってみないと分からない」部分が多い工事になります。ここを曖昧にしたまま進めると、着工してから話が変わることがあるのです。確かめておきたいのは寸法と日数と付帯工事の3つになります。
在来浴室で起きる寸法の壁
タイル張りのお風呂、いわゆる在来浴室から入れ替える場合、いちばん多い誤算が寸法です。ユニットバスは工場で作られた決まったサイズの箱なので、いまの浴室と同じ広さのものが必ず入るとは限りません。壁の内側にある柱や梁が、思ったより出っ張っていることがあるからです。
ですから、現地調査で天井裏と床下を見てもらうことが欠かせません。点検口から中をのぞき、配管や土台の状態まで確かめてもらってください。メジャーで内寸を測っただけで見積書を出す会社には、少し慎重になったほうがよいでしょう。
入浴できない日数の目安
意外と見落とされるのが、工事中にお風呂へ入れない日数です。解体から設置、配管と電気、仕上げまで、工程は思ったより多く積み重なります。一般的には数日から1週間ほどみておくよう案内されますが、日数は家の状態しだいで前後します。
大切なのは、平均を知ることではなく自分の家で何日になるかを書面でもらうことです。そのうえで、近くの入浴施設や実家を頼る段取りを先に決めておきましょう。お子さんの習いごとや仕事の都合と重なると、後から慌てることになります。
見積書に出にくい付帯工事
お風呂の工事には、本体以外の作業がいくつもぶら下がります。解体したものの処分、給排水と給湯の配管、電気の配線、入口まわりの壁や枠の補修。在来浴室からの入れ替えなら、土間のコンクリート打ちや木部の補修も加わります。
これらが見積書に書かれているかどうかを、必ず確かめてください。一式とだけ書かれていたら内訳を聞く。この一手間で、後から追加になる場面をかなり減らせます。見積書の読み方は別の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。
お風呂リフォームによくある質問

ここからは、お風呂選びでよく寄せられる疑問をまとめました。ショールームでは聞きにくい内容もあるかと思います。気になる項目だけ読んでいただいて構いません。
ユニットバスの寿命の目安
15年から20年ほどが、入れ替えを考え始める一つの目安とされています。ただし年数そのものより、症状で判断するほうが確かです。床のひび割れ、扉の建て付けの悪さ、掃除しても取れない黒ずみが出てきたら、検討を始める時期と考えてよいでしょう。
在来浴室とユニットバスの違い
在来浴室は現場でタイルを貼って作るお風呂、ユニットバスは工場で作った部材を現場で組み立てるお風呂です。大きな差は防水性にあります。在来は自由な形にできる反面、目地から水が回りやすく、断熱も弱くなりがちです。
浴室暖房乾燥機は必要か
洗濯物を室内で干したい方と、冬の寒さが心配な方には価値があります。一方、浴室を乾かす目的だけなら、換気扇の運転時間を延ばすほうが手軽です。電気工事を伴うので、付けるなら本体工事と同時にするのが合理的でしょう。
同じサイズしか入らないのか
そうとは限りません。在来浴室からの入れ替えでは、壁を作り直すことで広くできる場合があります。逆に、柱や配管の位置によっては今より小さくなることもあります。どちらになるかは現地調査で決まるので、希望は最初に伝えておいてください。
メーカーはどう選べばよいか
どこが優れているという答えは、当サイトでは出しません。各社とも得意な部分が違い、同じメーカーでもグレードで中身が変わるからです。この記事の3つの軸で仕様表を見比べ、ショールームで体に合うほうを選んでいただくのが、いちばん確かな方法になります。
まとめ

お風呂選びは、選択肢が多いからこそ迷います。けれども見る場所を断熱と床と換気の3つに絞れば、カタログの厚みに振り回されることはありません。どれも後から変えられない部分であり、毎日必ず体感する部分でもあります。
- 断熱は壁と天井が標準か見る
- 床は乾きやすさと目地で選ぶ
- 黒い床でも汚れは白く目立つ
- 通気口は扉の下か上かを見る
- カタログは仕様一覧表から見る
- ショールームではまたいで座る
- 後から足せるものは後回し
- 現地調査で天井裏と床下を見る
- 入浴できない日数は書面でもらう
そして、商品が決まっても会社選びは別の話になります。同じお風呂を選んでも、工事の段取りと引き渡し後の対応で満足度は変わるからです。複数の会社の提案を並べて、説明の丁寧さまで比べてみてください。
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