毎日使っているガスコンロが古くなってきた。掃除のたびに五徳を外すのが億劫になってきたし、年をとった親のことを思うと火を使わないほうが安心かもしれない。そう思ってIHを調べてみたものの、キッチンごと入れ替えることになるのではないか、電気が足りるのだろうか、いま使っているお鍋はどうなるのだろうか。調べるほど分からないことが増えて、手が止まってしまう方がいらっしゃいます。
先にお伝えします。ガスコンロだけを入れ替えてIHにすることはできます。キッチンを丸ごとやり直す必要はありません。ただしガス管のガス止めと、200ボルトの配線という二つの工事が入ります。そして選ぶときにそろえるものが二つだけあります。
この記事は、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から書いています。工事の中身と、選ぶ前に確かめておくことをお伝えします。
直美さん ガスコンロからIHに、うちでも替えられるでしょうか。
ナビ 替えられますよ。入る工事は二つだけです。
- キッチンごと替えるのかが不安
- 電気が足りるのか分からない
- ガス管をどうするのか知りたい
- 手持ちのお鍋が使えるか心配
- グリルがなくなるのか気になる
入れ替えに要る工事は二つ

まず、いちばん気になるところからお答えします。替えられるのか、どこまで工事になるのか。ここがはっきりすれば、あとの話はずっと見通しがよくなります。入る工事は二つだけで、どちらもご自分で手配するものではありません。順にお伝えします。
コンロだけの入れ替え
ガスコンロだけを入れ替えて、IHに替えることができます。キッチン本体はそのままで差し支えありません。天板に空いている穴へ、新しい機器を落とし込む形になります。扉も引き出しもシンクも、いま使っているものがそのまま残ります。
この点は、食洗機や洗面台の入れ替えと同じ考え方です。設備は一式でできているように見えますが、機器は機器として取り外せるようになっているのです。食洗機の場合は食洗機だけ交換できる?に、洗面台の場合は洗面台だけ交換できる?に、頭の上のフードはレンジフードだけ交換できる?にまとめてあります。
ガス止めと配線の受け持ち
ただし、ガスから電気へ替えるわけですから、機器を入れ替えるだけでは終わりません。入る工事は二つです。ひとつはガス管のガス止め、もうひとつが200ボルトの配線です。ガスを止めないまま機器だけを外すわけにはいきませんし、IHは200ボルトが来ていないと動きません。どちらも省けるものではない、ということになります。ただしこの二つは、同じ日のうちに段取りが組まれます。
ガス止めをおこなうのはガス業者です。配線をおこなうのは電気工事店になります。ここで安心していただきたいのは、どちらもリフォーム店が手配するという点です。ご自分でガス会社に電話を入れたり、電気工事店を探したりする必要はありません。窓口はひとつのままで進みます。
下見で見る分電盤の空き
では200ボルトの配線が組み込めるかどうかは、何で決まるのか。見るのは家全体の電気の容量と、分電盤の容量です。ここに余裕があるかどうかで、工事の中身が少しだけ変わります。コンセントを一つ足すような工事とは、少し話が違うところです。
足りない場合でも、できないという話にはなりません。アンペアを上げて必要な容量を確保してもらえばよいからです。そしてこの確認は、下見のときに電気工事店が見てくれます。ご自分で分電盤を開けて数える必要はありませんので、そこは任せてしまって結構です。電気の回路を足す考え方はキッチンのコンセントは増やせる?にも書いています。

そろえるのは開口とグリル

工事の中身が分かったら、次は商品を選ぶ番です。ここで押さえていただきたいのは二つだけになります。天板に空いている穴の寸法と、グリルがあるかないか。この二つさえそろえば、いまのキッチンのまま入れ替えられます。逆にここがずれると、現場で収まらないということが起きてしまいます。
開口の寸法は二つの規格
天板に空いている四角い穴のことを、開口の寸法と呼びます。いまは60センチと75センチの二種類が規格になっています。ですから、どれでも好きなものを選べるわけではなく、いまのお宅の寸法に合うほうを選ぶことになります。
とはいえ、二種類しかないというのは心強いところでもあります。規格がそろっているおかげで、たいていの機器は寸法が合うようにできているからです。昔のように一台ごとに寸法が違う、ということにはなっていません。入れ替えて使っていただくことを前提に、各社がそろえてきた結果です。
昔の機器と海外製の注意
ただし例外が二つあります。ひとつはかなり昔の機器です。当時は開口の寸法が今とは違っていましたので、同じ60センチのつもりでも合わないことがあります。もうひとつは海外製の機器で、こちらも開口の寸法が異なることがあります。
どちらに当たるかを、ご自分で見分けるのはむずかしいでしょう。ですからいま付いている機器の品番で、カウンターの開口寸法を確認してもらってください。品番は機器のどこかに記されていますし、分からなければ下見のときに見てもらえば済みます。品番の読み方はリフォームの型落ちは選べる?でも触れています。
グリルの有無はそろえる
もうひとつがグリルです。グリルのないIHもあります。見た目がすっきりしますし、使わないなら要らないと思われるかもしれません。魚を焼くのは年に数回、という方も多いでしょう。ただし、ここに落とし穴があります。
いまグリルがある場所へ、グリルのない機器を入れると収まりがうまくいきません。下に空く場所の作りが違うからです。ですからグリルの有無は、いまと同じものを選んでください。あるならあるもの、ないならないもの。そろえるだけのことですが、言われないと気づきにくいところでもあります。

お鍋の確かめ方と選ぶ理由

工事と商品の話が済んだところで、暮らしのほうの話に移ります。IHにして困るのではと言われるのが、手持ちのお鍋のことです。そしてもうひとつ、そもそもなぜIHを選ぶのかという話も最後にお伝えします。替える理由は、新しくしたいからだけではないのです。
磁石がつけば使えるお鍋
お鍋が使えるかどうかは、お店に持っていかなくても分かります。お鍋の底に磁石を当てて、くっつけばIHで使えます。これだけです。冷蔵庫に貼ってある磁石で足りますので、今夜にでも確かめていただけます。わざわざお店まで持ち込んで見てもらう必要はありません。
そして最近のお鍋は、IHで使えるものが一般的に売られています。これから買い足すぶんには、まず困りません。買い替えのたびに対応しているかどうかを気にする場面も、だんだん少なくなってきました。長く使ってきたお鍋だけ、先に磁石で見ておく。そのくらいの構えで足ります。
使えないお鍋とオールメタル
いっぽうで使えないお鍋もあります。土鍋とアルミ鍋がその代表です。それから高級な多層のお鍋で、層の間にアルミが入っているものも使えないことがあります。こだわって選んだお鍋ほど、確かめておいたほうがよいというわけです。
どうしても使いたいお鍋がある場合には、逃げ道があります。オールメタル用のIHを選ぶと使えるようになります。ただし金額は上がりますし、土鍋だけは対応できません。使いたいお鍋がはっきりしているなら、打ち合わせのときに伝えておいてください。希望の伝え方はリフォーム要望の伝え方にまとめてあります。
火を使わないという安心
最後に、替える理由のほうの話です。新しくしたいから替える方ばかりではありません。年齢を重ねて、火を使うことが心配になって替える方がいらっしゃいます。一緒に住んでいるお母さまが火を使うのが気がかりで、という相談も受けます。
IHには火がありません。ですから袖に燃え移る心配も、消し忘れの心配もなくなります。火力が足りないのではと言われることもありますが、そこは問題にならないとお考えください。天板が平らなので、お手入れも楽になります。義理のご実家のことを相談されている方にも、覚えておいていただきたい選び方です。
IHへの入れ替えのよくある質問

ここからは、ガスからIHへの入れ替えについてよくいただくご質問にお答えします。やっぱりガスに戻したくなったとき、電気の契約のこと、そして下見の時間。気になりやすい五つを順に取り上げます。
ガスに戻すこともできますか
できます。数は多くありませんが、そういうご要望も実際にあります。ガス管を残してあるかどうかで手間が変わりますので、戻すかもしれないという気持ちが少しでもあるなら、入れ替えのときに担当の方へ伝えておくとよいでしょう。
アンペアを上げる必要がありますか
お宅によります。いまの容量に余裕があればそのままで、足りなければ上げて必要な容量を確保します。どちらになるかは下見で分かりますので、先に心配しなくて結構です。上げる場合も、工事の日が別に増えるわけではありません。
下見はどれくらいかかりますか
IHの交換だけなら1時間程度で終わります。来るのはリフォーム工事店の方と電気工事のできる職人の2名です。当日の流れはリフォームの現地調査は何を見る?に書いています。
海外製のIHでも入りますか
入ることもありますが、開口の寸法が国内の規格と違う場合があります。必ず寸法を確認してもらってください。選べる商品の幅についてはリフォームはどこに頼む?もご覧ください。
グリルをなくすことはできますか
いまグリルがあるなら、そろえていただくほうが確実です。収まりがうまくいかないためです。どうしても外したい場合は、天板ごと替えるかどうかという話になりますので、キッチンの入れ替えとあわせて考えることになります。
いまのキッチンのまま替える

ガスコンロからIHへの入れ替えは、思っていたより小さな話でした。コンロだけを入れ替えればよく、キッチンごとやり直す必要はありません。入る工事はガス止めと配線の二つで、どちらもリフォーム店が手配してくれます。
選ぶときにそろえるのは開口の寸法とグリルの有無の二つだけです。お鍋は磁石で今夜にでも確かめられます。火を使わない暮らしに替えたいと思ったら、まずは下見で分電盤を見てもらうところからです。
- コンロだけの入れ替えで替えられる
- 入る工事はガス止めと配線の二つ
- ガス止めはガス業者が受け持つ
- 配線は電気工事店が受け持つ
- 手配はどちらもリフォーム店から
- 下見で分電盤の空きを見る
- 開口の寸法は60センチと75センチ
- 昔の機器と海外製は品番で確認
- グリルの有無は今と同じにそろえる
- お鍋は磁石がつけば使える
そろそろ具体的に、と思い始めた方は、何社かのお見積もりを並べるところからになります。費用がかかるのかどうかはリフォームの見積もりは無料?に書いています。
キッチンそのものを替えるかどうか迷っている方はキッチンリフォームの選び方を、機器の替え時については築20年の水回りリフォーム時期をご覧ください。工事のあいだの食事はキッチン工事中の食事はどうする?にまとめてあります。


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