届いた見積書をめくっていくと、合計のすぐ上あたりに見慣れない行があります。出精値引き。読み方も意味も分からないまま、金額だけがマイナスで書かれている。ありがたい話のようでいて、どこか落ち着かない。もともと高めに出しておいて、引いたように見せているのではないか。そんな気持ちになる方もいらっしゃいます。
先にお伝えします。出精値引きは、会社の利益から引かれているものです。商品の代金や工事の費用を削って作った金額ではありません。そしてこれ以上は下げられません、という意思表示でもあります。意味が分かると、この行は読みどころに変わります。
この記事は、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から書いています。どんなときに入る行なのか、どこから引かれているのか、ほかの値引きと何が違うのかをお伝えします。
直美さん 見積書の下に出精値引きとあります。これは何でしょう。
ナビ 会社の利益から引いた分ですよ。品質は下げていません。
- 見慣れない行で意味が不明
- 高く出して引いた気がする
- どこを削ったのか心配
- 聞いてよいのか分からない
- ほかの値引きとの違いが不明
出精値引きは何の行か

まずは言葉そのものを片づけてしまいましょう。見慣れない字が並んでいますが、やっていることは単純です。どんな場面で入る行なのか、何を意味する言葉なのか、そして頼まなくても入っていることがあるのか。順にお伝えします。ここが分かると、見積書を開いたときの身構えがなくなるはずです。
多くは端数を丸めるときの行
まず、珍しいものではありません。見積書にはよく入る行です。そしてお客様に向けて使う場合は、端数を丸めてキリのよい金額にするときに多く使われます。合計に細かい数字がぶら下がったままでは落ち着かない、という感覚はどなたにもあるものです。
細かい数字がずらりと並んだ合計を、すっきりした形に整える。そういう場面で登場すると考えていただければ足ります。特別な事情があるときだけ出てくる行、というわけではありません。ですから、この行があるからといって身構える必要はないのです。ごく当たり前に使われている書き方だと受け取っていただければと思います。
品質を下げずに引く値引き
言葉の意味もはっきりしています。商品やサービスの品質を下げずに、売り手が企業努力として行う特別な値引きのことです。出精とは、精いっぱい努めるという意味の言葉。読みにくい漢字が並んでいるだけで、言っていることは難しくありません。
ここがいちばん大事なところです。安くするために何かを抜いたわけでも、グレードを落としたわけでもありません。品質や仕様はそのままで、採算ぎりぎりまで譲る。その姿勢を表した行だということです。見積書に並んでいる商品も工事も、提案を受けたときのまま。そのうえで金額だけが下がっている。それが出精値引きという行の正体です。
頼まなくても入っていることがある
もうひとつ知っておいていただきたい点があります。端数を切る形のものは、こちらが頼まなくても最初から入っていることがあります。
値引きの相談をした覚えがないのに、なぜこの行があるのだろう。そう思われるのはこのためです。何かの手違いでもありませんし、こちらが気づかないうちに何かを約束したわけでもありません。最初からそういう形で出してくれている、と受け取っていただいて差し支えありません。こちらから何かを言い出す必要もないところです。金額の相談のしかたそのものはリフォームの値引き交渉はしていい?をご覧ください。
引かれているのは会社の利益

ここからがこの記事の本題です。出精値引きという行があるとき、その金額はどこから出ているのか。見積書には商品の代金も工事の費用も並んでいますから、そのどこかが削られたのではと思えてしまいます。けれども引かれている場所は決まっていて、迷うところがありません。順にほどいていきましょう。
商品も工事も削られていない
答えは明快です。出精値引きは、会社の利益から引かれています。商品の代金でも、工事の費用でもありません。見積書の中で言えば、いちばん下に積まれている層にあたる部分です。
ですから、安い部材に変えられたとか、工事の手間を減らされたということは起きていません。頼んだ仕様のまま、会社の取り分だけが薄くなっているという形です。ここを知っていると、不安の半分は消えてしまいます。どこか見えないところを削られたのでは、という心配をしなくて済むからです。

ここが限界ですという合図
そしてもうひとつ、読み取れることがあります。この行は、これ以上は下げられませんという意思表示でもあります。会社の取り分に手をつけたあとだから、という理屈です。
以前の記事で、金額が下がるときには順番があるとお伝えしました。こだわりのない部分のグレード、会社の利益、職人の手間、という順です。出精値引きは二段目に手をつけた印ですから、さらに求めると三段目に近づいていくことになります。その順番はリフォームの値引き交渉はしていい?でくわしく書きました。
諸経費からは引かれない
まぎらわしいものに諸経費があります。こちらは値引きの対象にはならないところです。養生や運搬、廃材の運び出しといった現場を動かすお金と、事務の手間や保険といった会社を動かすお金が入っていて、削ると工事そのものに影響するためです。
同じ見積書の下のほうに並んでいますので混ざりやすいのですが、役目はまったく違います。片方は工事を動かすための費用、もう片方は会社が譲った分。並んでいる位置が近いだけ、とお考えください。諸経費に何が入っているのかはリフォーム見積書の諸経費とは?にまとめてあります。
ほかの値引きとの違い

値引きと名のつくものは、ほかにもあります。同じように見えて、出どころがまるで違うものです。並べて見ておくと、出精値引きがどういう性質のものかがはっきりしてきます。そして最後に、この行について聞いてよいのかという話をさせてください。ここがこの記事でいちばん背中を押したいところです。
キャンペーンや在庫処分とは別もの
よく見かけるものに、キャンペーンの値引きや在庫処分の値引きがあります。これらは販売を進めることを目的にした値引きで、出精値引きとは異なります。名前に値引きと付いていても、中身は別のものだということです。
期間を決めて行うもの、残った品を売り切るためのもの。どちらも悪いものではありませんが、出どころが違います。あらかじめ用意されていた仕組みに乗る形だからです。いっぽう出精値引きのほうは、その一件のために会社が判断して譲ったものという性質を持っています。

高く出しておいた形ではない
いちばん気になっているところにお答えします。もともと高く出しておいて引いている、ということではありません。自社の努力として引いているものだからです。見せかけを作るために、わざわざ会社の取り分を減らす理由がないのです。
水増しのための仕掛けではないか、と疑われることがあるのですが、仕組みがまるで違います。とはいえ、紙の上の数字だけで信用してくださいと申し上げるつもりもありません。気になるようでしたら、数社の紙を並べてみるのがいちばん確かです。同じ条件で頼めば、金額の組み立て方の違いも見えてきます。進め方はリフォーム相見積もりの取り方に書いています。
聞いても差し支えない
最後に、いちばんお伝えしたいことです。この行について聞いていただいて差し支えありません。むしろ、分からないところはどんなことでも確かめていただくほうがよいと思います。
リフォーム店の側は、しっかり説明できる内容です。聞かれて困る質問ではありませんし、答えられないような行でもありません。遠慮して分からないまま押印するほうが、あとあとまで気持ちに残ります。ひとこと聞くだけで済む話ですので、その場で確かめてしまってください。
出精値引きのよくある質問

ここからは、出精値引きについてよくいただくご質問にお答えします。金額のこと、書き方のこと、そして交渉との関係。気になりやすい五つを順に取り上げます。
金額の決め方に決まりはありますか
決まりはありません。品質や仕様は落とさずに、採算ぎりぎりまで譲る姿勢を示したものになります。割合で決まっているわけでもありませんので、よそと比べて多い少ないを論じる性質のものではありません。金額そのものより、どこから引かれているかを見ていただくほうが役に立ちます。
出精値引きを増やしてもらえますか
お願いすること自体は差し支えありません。ただ、この行が出ている時点で会社の取り分には手がついています。そこからさらに求めると、職人の手間のほうへ近づいていくことになります。頼み方のこつはリフォームの値引き交渉はしていい?にまとめました。
ほかの書き方をされることはありますか
お値引き、調整額といった書き方を見かけることもあります。言葉が違っても、合計のすぐ上あたりに置かれているのは同じです。書き方は会社ごとに少しずつ違いますので、見慣れない言葉があってもおかしなことではありません。分からなければ、その行を指して聞いていただければ答えてもらえます。
合計のどこを先に見ればよいですか
値引きの行より先に見ていただきたいのは、数量の欄です。何をいくつ頼んでいるのかが分かってはじめて、金額の意味も分かってきます。見方はリフォーム見積書の数量と単位の見方に書いています。
一式の行が多いと分かりにくいか
一式でまとめてあっても、聞けば内訳は説明してもらえます。合計そのものは、行を分けて書き直しても変わりません。くわしくはリフォーム見積書の一式とは?をご覧ください。
意味が分かれば迷わない

出精値引きは、身構えるような行ではありませんでした。引かれているのは会社の利益で、商品も工事も削られていません。そして多くは、端数を丸めてキリのよい金額にするときに入ります。
同時に、ここが限界ですという合図でもあります。意味が分かっていれば、どこまで相談してよいかの目安にもなるわけです。分からない行があれば、遠慮なく聞いてください。
- 見積書によく入る行
- 多くは端数を丸めるとき
- 品質を下げずに引く値引き
- 頼まなくても入っていることがある
- 引かれるのは会社の利益
- 商品も工事も削られていない
- これ以上下げられないという合図
- 諸経費からは引かれない
- キャンペーンや在庫処分とは別もの
- 聞けば説明してもらえる
そろそろ具体的に、と思い始めた方は、何社かのお見積もりを並べるところからです。費用がかかるのかどうかはリフォームの見積もりは無料?に書いています。
見積書のほかの行の読み方はリフォーム見積書の別途とは?に、紙そのものの期限はリフォーム見積書の有効期限は?に、支払いの時期はリフォームの支払いはいつ?にまとめてあります。


コメント