見積もりをもう一社にも頼みたい。けれど、それを口に出したら気を悪くされるのではないか。ここで手が止まってしまう方は本当に多いです。一社に来てもらっただけで何となく話が進み、言い出せないまま契約の話になってしまう。相見積もりという言葉を知っていることと、それを目の前の担当者に伝えられることは、まったく別のむずかしさがあります。
先に結論をお伝えします。相見積もりだと伝えても、嫌がられることはありません。提案が意地悪になることも、手を抜かれることもない。これが、提案書を作る側から見てきた実際のところです。
この記事は、住宅設備建材メーカーでハウスメーカーやリフォーム会社への商品提案と提案書づくりを担当している立場から書いています。見積もりを受け取る側ではなく、その見積もりのもとになる提案を組む側から見た景色をお伝えします。
直美さん ほかの会社にも頼みたいんです。相見積もりですって言ったら、感じが悪いでしょうか。
ナビ それが、ほとんど何も変わらないんですよ。むしろ早めに言っていただいたほうが、こちらも動きやすいんです。
- 相見積もりと言い出せない
- 言うと手を抜かれないか不安
- 何社に頼んだか聞かれたら困る
- 断るときのことを思うと気が重い
- そもそも比べ方が分からない
相見積もりと伝えても嫌がられない

いちばん気になっているところから書きます。相見積もりだと伝えたせいで提案が悪くなる、ということはありません。伝えた、伝えないで、提案書の作り方が大きく変わることはないからです。
理由は単純で、どの会社も最初から選ばれるつもりで提案を組んでいるためです。ほかに声がかかっているかどうかは、作業の中身を左右する種類の情報ではありません。
そもそもリフォーム会社の側は、一社だけに絞って相談される前提で動いてはいません。何社か見比べてから決めるのが普通の買い物だと、担当者はよく知っています。遠慮しているのは、たいてい頼む側だけです。ためらっているあいだに時間だけが過ぎて、結局は一社で決めてしまった。そういう後悔のほうが、よほど長く残ります。
提案書の作り方は大きく変わらない
私のところにも、リフォーム店さんから「今回は相見積もりなので」というご連絡が入ることがあります。ではそのとき特別なことをするのか。同じ商品のご提案であれば、提案書の作り方に大きく変わるところはありません。
変わるのは、まったく別のところです。そのリフォーム店さんが、お客様のお困りごとをどれだけ聞き取れているか。しっかり伺えていれば、ご要望をできるだけ入れた、満足していただける提案になります。
ですから、伝えるかどうかで悩む時間は、正直なところもったいないと感じます。その時間は、どこが不便でどう変えたいのかを整理するほうに使っていただきたいです。
手を抜かれることはまずない
リフォームは、人と人とのお付き合いで進んでいく仕事です。リフォームへの思いを伝えていただいて、担当者を信頼していただけたなら、その担当者が手を抜くようなことはまずありません。
ほかにも声がかかっていると知ったとたんに雑になる。そんな進み方を私は見たことがありません。比べられると分かっているぶん、むしろ気を入れて取りかかるものです。
ただし、これは担当者を信頼できる場合の話になります。説明が雑だったり、こちらの話をさえぎって商品をすすめてきたりするなら、相見積もり以前のところでつまずいています。そのときは遠慮なく、ほかの会社を当たってください。
社名や社数を聞かれても答えてよい
相見積もりだと伝えると、何社に声をかけているかを聞かれると思います。社名まで聞かれることもありますが、正直にお答えいただいて構いません。
むしろ隠すほうが話がややこしくなります。どこと比べられているのかが分かれば、同じ土俵に乗る提案を出しやすくなるからです。聞いているのは、意地悪をするためではありません。

伝えたあと会社の中で起きること

ここからは、よそではあまり読めない部分だと思います。相見積もりだとお伝えしたあと、その会社の中では何が動いているのか。提案書を作る側から見える景色を、そのまま書きます。
知っておくと、担当者の動きの意味が分かるようになります。意味が分かってしまえば、怖さはずいぶん小さくなるはずです。
なお、ここに書くのは提案を組む側から見えている範囲のことです。会社ごとのやり方の細かい違いまでは分かりませんので、そこはご承知おきください。
ヒアリングの深さで提案が決まる
提案の良し悪しを決めているのは、相見積もりかどうかではありません。担当者がどれだけ丁寧にお話を聞けているか、ほとんどそれだけだと言ってもよいくらいです。
聞き取りが浅いまま私のところへ依頼が届くと、出せるのは一般的な標準の提案になります。困っていることが具体的に伝わっていれば、そこを解きにいく提案が組めます。何をどう伝えるかはリフォーム要望の伝え方にまとめました。
つまり、良い提案を引き出す力は、実はお客様の側にもあるということになります。何に困っているのかを一つでも多く話していただけたほうが、返ってくる提案の精度は確実に上がります。うまく言えなくても構いませんので、思いついた順に並べてみてください。
その場で決められる人が加わる
打ち合わせに、担当者より上の立場の人が加わることがあります。身構えてしまうかもしれませんが、これは圧をかけるためではなく、担当者ひとりでは決められないことをその場で決められるようにするためです。
信頼していただけるかどうかがすべての商談ですから、会社としても人を厚くして臨みます。人数が増えたときは、その場で答えが出る機会だと考えて、聞きたいことをぶつけてみてください。
仕入れの条件は会社ごとに違う
もうひとつ、はっきり変わるものがあります。同じ商品でも、メーカーから仕入れる条件は会社ごとに違います。それまでの取り扱いの量によって決まるので、横に並べても同じ数字にはなりません。ご希望のメーカーをふだんからよく扱っている会社ほど、その商品は出しやすくなります。
会社によって数字が違うのは、まずこのもともとの条件の差です。そのうえで、なんとか受注したいという思いから、自社の利益を削ってでも金額を下げてくる会社も少なくありません。見積書の数字には、その会社の企業努力も入っています。頼み先ごとの違いはリフォームはどこに頼む?をどうぞ。
ただ、条件の差があるぶん、下げられる幅には会社ごとに限りがあります。ほかより高かったからといって、そこへ無理に合わせてくださいとお願いするのはおすすめしません。金額だけで決めてしまうと、せっかくそろえた提案の中身を見ないまま選ぶことになってしまいます。
比べられる見積もりにする頼み方

嫌がられないと分かっても、伝え方しだいで比べやすさは変わります。大事なのは、各社の足並みをそろえることです。ここを外すと、せっかく集めた見積もりが読めない紙の束になります。
そろっていないものを並べても、どこがどう違うのかは分かりません。分からないまま金額の欄だけを見ると、いちばん小さい数字を選ぶしかなくなってしまいます。
ここから先は、伝え方そのものの話になります。むずかしいことは一つもありません。順番と時期をそろえる、ただそれだけです。
相見積もりになったら速やかに伝える
伝えるタイミングは、いつでも構いません。問い合わせのときでも、下見のあとでも大丈夫です。ただし相見積もりになると決まったら、できるだけ速やかにお伝えください。
後から分かると、各社の見積もりが出てくる時期がばらばらになります。一社だけ先に仕上がり、残りはずっと後。最初の会社を待たせたまま迷うという、いちばん気まずい形になってしまいます。
各社の足並みをそろえる
同じことを、同じ時期に検討できるようにする。これができていると、比べる作業が一気に楽になります。条件のそろっていない紙を見比べても、頭の中がこんがらがるだけです。
伝える中身をそろえて、期限を切って同時に頼む。段取りそのものが、比べやすさを作ります。手順はリフォーム相見積もりの取り方に細かく書きましたので、あわせてお読みください。
期限は長すぎないほうがうまくいきます。あまり間が空くと、最初に聞いた話の記憶が薄れてしまうからです。期間そのものは、各社に無理のない範囲を相談して決めてください。
決まったらはっきり断る
ここだけは、お願いに近い話になります。ほかの会社に決まったら、遠慮なくはっきりとお断りください。知らないままでいると、その会社は提案を作り続けることになります。
気まずいからと連絡をしないでいると、追いかける連絡がいつまでも続きます。断ったつもりで伝わっていないということも、実はとても多いです。言い回しはしつこい営業を断る言い方7選にそのまま使える形で載せています。
断るのは心苦しいものですが、相手にとっては早く分かるほどありがたい知らせでもあります。次のお客様へ時間を回せるからです。ここは礼儀として伝えるもの、とお考えいただくとよいかもしれません。

相見積もりの伝え方によくある質問

ここからは、相見積もりを伝えるときによくいただくご質問にお答えします。口に出してよいものか迷いやすいものを選びました。気になる項目から読んでいただければと思います。
何社に頼んでいるか聞かれたら
正直にお答えいただいて大丈夫です。社名を聞かれることもありますが、それも答えて差し支えありません。隠すと、かえって話が進みにくくなります。
相見積もりと言うと高く出されないか
そうしたことは起きません。伝えたかどうかで提案書の作り方は変わらないとお考えください。会社ごとに数字が違うのは、もともとの仕入れの条件が違うからです。
よその金額を伝えてもいいのか
伝えること自体は構いません。応えようとする会社もありますし、できる範囲には会社ごとに限りもあります。ただ提案の中身がそろっていない状態で金額だけを並べても、比較になりません。今日決めれば安くなると言われたときは、リフォームの値引きは今日決めないと消える?もあわせてお読みください。
伝えるのは下見の前か後か
どちらでも構いません。決まった時点で早めに、これだけ守っていただければ十分です。下見より前に分かっていれば、各社の日程を近づけてもらいやすくなります。
断るときに理由はいるか
くわしい理由はいりません。ほかに決まりました、の一文で十分です。理由を長く説明するほど、やりとりが続いてしまう形になります。伝えたのに連絡が止まらないときは、断ったのに連絡が来る理由と止め方もあわせてご覧ください。
まとめ

相見積もりだと伝えることは、失礼でも何でもありませんでした。提案の中身を決めているのは、相見積もりかどうかではなく、どれだけ話を聞けているかです。言い出せずに止まっているのなら、その遠慮は手放していただいて大丈夫です。
- 伝えても嫌がられることはない
- 同じ商品なら提案書の作り方は変わらない
- 変わるのは聞き取りの深さのほう
- 信頼があれば手は抜かれない
- 社名も社数も答えて構わない
- 上の立場の人はその場で決めるため
- 仕入れの条件は会社ごとに違う
- 決まったら速やかに伝える
- 各社の足並みをそろえて頼む
- 条件がそろって初めて比べられる
- 中身をそろえてから金額を見る
- 決まったらはっきり断る
- 断る理由は長く言わなくてよい
そろえて比べられる形さえ作れば、相見積もりは怖いものではなくなります。同じ条件で、同じ時期に。これだけです。そろそろ具体的に動こうと思い始めた方は、何社かに声をかけるところから始めてみてください。
見積書そのものの読み方はリフォーム見積書の見方、提案書の見るところはリフォームの提案書はどこを見る?にまとめています。会社の見分け方はリフォーム会社の選び方、あとから費用が増えるのが心配な方はリフォームの追加費用、打ち合わせの回数や立ち会いが気になる方はリフォームは住みながらできる?もあわせてどうぞ。


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